従来の処遇改善加算は(Ⅰ)を取得しましょう
令和元年10月1日から適用がスタートした福祉・介護職員等特定処遇改善加算では「従来の処遇改善加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までのいずれかを算定していること」が要件の1つとなっています。
以下、従来の処遇改善加算について、改めて説明していますが、正直なところ文字で読むと、なかなか難解です。しかし、実際の届出は、それほど難しいものではありません。
従来の処遇改善加算を取得していない事業所様、あるいは取得していても加算(Ⅰ)ではない事業所様は、是非、この機会に処遇改善加算(Ⅰ)を取得した上で、新しく適用される特定処遇改善加算も取得されてはいかがでしょうか?
☆算定を検討される事業所様は、お気軽に、当事務所までご相談下さい。
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従来の処遇改善加算とは
従来の処遇改善加算は、新しい加算と同様に、福祉・介護職員の処遇を改善し、人材の確保・定着につなげることを目的としたものです。厚生労働省が、都道府県などに対し、周知徹底を図るよう通知を出しています。
処遇改善加算の見込額
処遇改善加算の見込額は、(他の加算を含んだ障害福祉サービスの報酬)×(サービス別の加算率)で求めることができます。
例えば、算定要件のハードルが最も高い処遇改善加算(Ⅰ)を障がい者グループホーム(共同生活援助)で算定した場合、加算率は8.6%で、仮に月に100万円の報酬があれば、処遇改善加算で8万6千円が上乗せされることになります。他のサービスの場合、例えば放課後等デイサービスで8.4%、生活介護で4.4%などとなっています(※いずれも加算(Ⅰ)の場合)
他の加算を含んだサービスの報酬に乗じることから、金額はそれなりに大きくなる加算です。しかし、要件をクリアするのが難しいと考えているのか、あえて(Ⅰ)ではなく報酬の低い(Ⅱ)を取得している事業所もあるようです。
処遇改善の対象となる職種
処遇改善の対象は、直接支援をしている職員で、職種でいえばホームヘルパー、生活支援員、児童指導員、保育士、世話人などです。事業所は処遇改善加算で得た金額より1円でも上回る額をこれらの職員に支払う必要があります。(※特定処遇改善加算では、管理者やサービス管理責任者も処遇改善の対象にできます)
処遇改善加算の取得要件
従来の処遇改善加算を取得するには、「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」を満たす必要があります。
「キャリアパス要件」とは、簡単に説明すると、昇給と結びついた形でキャリアアップの仕組みを整えることです。要件は以下のⅠからⅢに分かれています。
【キャリアパス要件Ⅰ】
次の(イ)、(ロ)、(ハ)のすべてに適合すること。
(イ) 福祉・介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(賃金に関するものを含む)を定めていること。
(ロ) (イ)に掲げる職位、職責又は職務内容に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く)について定めていること。
(ハ) (イ)及び(ロ)の内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全て福祉・介護職員に周知していること。
【キャリアパス要件Ⅱ】
次の(イ)及び(ロ)の全てに適合すること。
(イ) 福祉・介護職員の職務内容等を踏まえ、福祉・介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び(一)又は(二)に掲げる具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
(一) 資質向上のため計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施するとともに、福祉・介護職員の能力評価を行うこと。
(二) 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等)を実施すること。
(ロ) (イ)について、全ての福祉・介護職員に周知していること。
【キャリアパス要件Ⅲ】
次の(イ)及び(ロ)の全てに適合すること。
(イ) 福祉・介護職員について、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次の(一)から(三)までのいずれかに該当する仕組みであること。
(一)経験に応じて昇給する仕組み:「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。
(二)資格等に応じて昇給する仕組み:「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みであること。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。
(三)一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み:「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。
(ロ) (イ)の内容について、就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知していること。
【職場環境等要件】
〇処遇改善加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)を取得する場合
平成27年から届出を要する日の属する月の前月までに実施した処遇改善(賃金改善を除く)の内容を全ての福祉・介護職員に周知していること。
〇処遇改善加算(Ⅲ)及び(Ⅳ)を取得する場合
平成20年から届出を要する日の属する月の前月までに実施した処遇改善(賃金改善を除く)の内容を全ての福祉・介護職員に周知していること。
加算の算定要件
〇処遇改善加算(Ⅰ)を取得する場合
キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、キャリアパス要件Ⅲ、職場環境等要件の全てを満たすこと。
〇処遇改善加算(Ⅱ)を取得する場合
キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境等要件の全てを満たすこと。
〇処遇改善加算(Ⅲ)を取得する場合
キャリアパス要件Ⅰ又はキャリアパス要件Ⅱのどちらかを満たすことに加え、職場環境等要件を満たすこと。
加算率
加算率は、処遇改善(Ⅰ)>(Ⅱ)>(Ⅲ)となっています。
例えば、障がい者グループホーム(共同生活援助)の場合、(Ⅰ)が7.4%、(Ⅱ)が5.4%、(Ⅲ)が3.0%となっています。
処遇改善を取得するなら、せっかくですから加算率の最も高い(Ⅰ)を取るべきだと考えますが、(Ⅱ)にされている事業所も多いようです。
(Ⅰ)を取得するには、「キャリアパス要件Ⅲ」を満たすために、賃金規定や客観的な人事評価の仕組みを設ける必要があるため、小規模な事業所では敬遠されているのかもしれません。
是非、加算(Ⅰ)を取得し、特定加算も取得しましょう
長期的な視点に立てば、「キャリアパス要件Ⅲ」の賃金規定や客観的な人事評価の仕組みを設けることは、人材の確保・定着、事業所の安定的な運営には必要なことです。そして、加算を取得するために、これらの仕組みを整えることは、実はそれほど難しいことではありません。
従来の処遇改善加算を取得していない事業所様、あるいは取得していても加算(Ⅰ)ではない事業所様は、お気軽に、当事務所までご相談下さい。処遇改善加算(Ⅰ)を取得し、可能であれば特定処遇改善加算も取得しましょう。
⇒TEL:06-7493-2979